現在心臓電気生理検査室では2室あるいは3室のカテーテル検査室で一日に4-6症例の徐脈性あるいは頻脈性不整脈の検査及び治療に当たっています。
アブレーション、デバイス治療を合計すると2011年度、2012年度にはそれぞれ583症例、701症例に対して治療を行ってきました。
心臓電気生理検査室で行う治療をカテーテルアブレーション、ペーシングデバイス植え込み手術、先天性心疾患に合併した不整脈の治療の3つに分けてご紹介します。
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カテーテルアブレーション
上室性、心室性頻脈性不整脈の多くは現在では高い成功率でカテーテル治療による根治が可能になっています。臨床的に認められている頻脈発作を実際にカテーテルによる心内電気刺激により誘発し、 頻拍持続中にその起源となる部位を確認してカテーテル先端で高周波通電を行い治療する方法をカテーテルアブレーション(電気的心筋焼灼術)と言います。
近年では使用機器の技術的進歩により、より深部まで焼灼できるイリゲーションカテーテルや、頻拍中の心内の興奮伝導パターン及び障害心筋の部位をコンピュータグラフィクス上で視覚的に確認できるような三次元マッピングシステム (CARTO system, EnSite system)も使用可能となり、よりカテーテルアブレーションの成功率は向上しています。
上室性頻拍(WPW症候群、房室結節リエントリー性頻拍)、心房粗動、心房頻拍、心室性期外収縮、心室頻拍(器質的心疾患を伴うもの、伴わないもの)などでは既に確立された治療となっており非常に高い成功率を達成しています。 現在はそれに加え心房細動症例に対しての肺静脈隔離術(PVI; Pulmonary Vein Isolation)も積極的に行っています。年々症例数を増やし2012年度では113症例に治療を行いました。 当院では全例で三次元マッピングシステム(CARTO Merge)を併用した拡大肺静脈隔離を行い、安全かつ高い成功率で治療を行っています。
我々のカテーテル検査室の一室はMagnetic Navigation System (Stereotaxis)を導入しています。このシステムはカテーテル検査室に常設した巨大な永久磁石の磁力で、柔らかく作られた専用カテーテルの先端の動きを別室からコンピューター画面上でクリックすることにより操作できるシステムです。現在では日本で専用カテーテルの製造承認が得られ、実際の臨床使用の開始時期を待っているところです。この技術によりこれまでカテーテルの固定が困難であった部位などへもカテーテルを固定できるようになり、アブレーション成功率の向上などが期待されます。 -
ペーシングデバイス植え込み患者の管理
ペーシングデバイスの技術はこの20年で飛躍的な進歩を遂げました。
徐脈性不整脈症例に対してのペーシングという本来の目的で使用されるペースメーカー機器から、 頻脈性不整脈の治療を行う植込み型除細動器(ICD)、心不全治療に対しての心室再同期療法(CRT)とハードウェアが発展するにつれ徐々にその治療の適応疾患も拡大しています。また近年ではリードとデバイス本体の間で測定する胸郭インピーダンス値を用いた心不全のモニタリング、MRI撮像が可能なデバイス、原因不明の失神例に対しての植込み型ループレコーダーなども実用化され、さらにその技術は進歩してきています。 我々の電気生理検査室では常にその時代の最新機器を用いて年間約300症例にデバイス植込み手術を行っています。また植込み手術後症例の管理としては遠隔モニタリングシステム (患者様の自宅に送信機を設置してデバイス情報を送信し医療従事者が病院で確認するシステム)を積極的に活用しており、現在までに約850症例のデバイス植込み症例(2013年8月現在)で導入を行いました。 これによりデバイストラブル、不整脈イベントを早期に発見し対応できるようになったと同時に、導入症例についてはデバイス外来をこれまでの外来から「遠隔モニタリング外来」として別に行う事により、デバイスチェックの待ち時間、外来受診間隔などの面においての受診負担を軽減する目的も果たしています。
また、我々の電気生理検査室ではデバイス感染(ポケット感染、敗血症)を生じた症例の管理にも力を入れています。多くの症例では根治のためにデバイス及びリードの全抜去を余儀なくされます。 静脈内、心内に癒着したリードの抜去は通常の手法では非常に困難であり、 当院では症例によってはエキシマレーザーシースを用いた抜去を行っています。 -
先天性心疾患に合併した不整脈の治療
当院の特徴の一つとして先天性心疾患症例及びその術後症例が多い事が挙げられます。先天性心疾患症例では特に頻脈性不整脈の合併が多く、心臓電気生理検査室ではこれらの症例に対しても積極的にカテーテルアブレーションを行っています。 また複雑な解剖構造を伴う症例ではペーシングデバイスのリード留置も困難な事が少なくありませんが、そのような症例についても積極的にペースメーカー、ICD、CRTなどのデバイス植込み手術を行っています。