経カテーテル肺動脈弁留置術:TPVI
〜当院で国内初のHarmony TPVI治療を施行〜
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先天性心疾患の患者さんは100人に1人の割合で一定して出生します。ファロー四徴症など肺動脈弁部(右室流出路)に疾患を抱える患者さんは先天性心疾患の22%程度と言われており、幼少期に修復術を受けた多くの方が、無症状で成人期を迎えます。
修復術(右室流出路形成術+心室中隔欠損閉鎖術)は、かつては根治術と言われていましたが、術後長期成績の研究により、 術後20-30年で多くに続発症が発症し、半数程度の症例に、再治療(手術)が必要とわかってきました。
図1 :術後遠隔期で出現してくる多くの続発症(肺動脈弁逆流、不整脈、大動脈拡大など)
- ファロー四徴症や肺動脈弁(右室流出路)狭窄の修復術として、自己組織温存による肺動脈弁拡大術は8割を占めますが、肺動脈弁前面が人工物のパッチ(当て布)になり弁組織が無いため、 術後の多くの患者さんに肺動脈弁逆流が存在することがわかっています。
図2:自己組織温存による肺動脈弁拡大術(Trans annular patch repair)
- 肺動脈弁逆流は、多くの場合は症状を伴いませんが、知らないうちに右心室を障害し、危険な不整脈の出現や、重症心不全、突然死を引き起こします。
図3:肺動脈弁逆流から突然死へ。20-30歳代の患者さんが突然死リスクに晒されている。
- これまで唯一の治療選択肢は開胸手術でしたが、無症候で患者年齢が若いため、適切な時期に手術が行われてきませんでした。そこで、低侵襲で短い入院期間で済む経カテーテル肺動脈弁留置術(TPVI)が開発されました。最新の肺動脈弁専用弁であるHarmony弁を用いたTPVIが日本で認可され、2023年3月2日に当院で国内初の治療が行われました。
- 治療は主に足の付け根からカテーテルを挿入して、肺動脈に到達後、ステント弁を展開して留置を行います。症例により、局所麻酔と鎮静のみで治療が可能で、手術時間は1時間半から2時間、入院期間は1週間です。退院後はすぐに職場復帰など社会復帰が可能です。
図4. Harmony弁:
図5:経カテーテル肺動脈弁留置術(Harmony TPVI)
①カテーテルにステント弁を畳み入れ、鼠径部から挿入。
②主肺動脈まで進める。
③上部を展開して位置を調整。
④ステント弁を全て展開して、カテーテルから離脱して終了。
- 欧米では10年以上前から同治療が行われており、これまでの10年程度の中期成績は良好で、致命的合併症は極めて稀です。また、肺動脈弁逆流に対する治療効果は、外科的肺動脈弁置換術と遜色ないことが報告されており、10年で85%-90%の再治療回避率となります。
- カテーテルを用いた低侵襲治療が行え、病状や、これまでの手術歴、仕事や家庭の都合など、様々な理由で、これまで手術に踏み切れなかった多くの方々にとって、新たな選択となり得ます。
図6:当院で行われた、国内初のHarmony TPVI治療(2023/3/2)